前回エントリーでご紹介した「遺伝子特許とそれを巡るバイオビジネスの問題」ですが、今回のエントリーでは具体的に、実際に進行中の問題についてご紹介します。
皆さんはBRCA1という乳癌関連遺伝子についてご存知でしょうか。このBRCA1遺伝子、米国のMyriad Genetics社が遺伝子特許、遺伝子を用いた診断方法、変異配列特許などの権利を保有し、これを用いて各国でビジネスを展開しています。
ところが、このMyriad Genetics社の保有する特許の一部が、ヨーロッパ特許庁では登録後に異議申し立てにより取り消されることになりました。(現在、上訴中。)
異議を申し立てたのはキュリー研究所やフランス国内の研究機関で、Myriad Genetics社が米国で他の機関がBRCA1遺伝子を用いた遺伝子診断の実施・実施のための研究を排除しようとしたとして問題視していました。
欧州での経緯についてはこちらに、詳細な記載があります。
ここで、遺伝子特許に特徴的な問題が浮かびあがってきます。
企業は研究のために莫大な予算を投じそれを回収する必要があります。その回収の手立ての一つが特許権です。これはビジネスを行うための当然の論理です。
しかし問題なのは、彼らが扱い利用する特許権は本来は自然界に存在し誰もが自分の細胞の中に持っている「遺伝子」という公共的な情報であり本来ならば社会がこの公共の情報を上手く運用することで、新たな治療法の開発や予防のための研究を通じて我々の社会に利益をもたらします。
一方、企業の保有する遺伝子特許が我々が本来受け取るべき利益を独占してしまっては特許法の趣旨にも反するばかりではなく、社会の不利益は計り知れないほど大きくなってしまいます。
このような問題が表面化したのがこのBRCA1遺伝子を巡る騒動でした。
現在そして、今後も残る遺伝子特許を巡る問題として研究の現場において「リサーチツール」となる遺伝子特許そのものの成立を社会は認めてしまっていいのか。また、その権利行使を研究の現場においても認めてしまっていいのか、というものです。
特許権が障害になり研究の進展が滞ってしまう社会。遺伝子診断の費用が異常な高値になり金持ちだけが遺伝子情報の恩恵に預かれるような社会。そのどちらも我々にとっては不利益ですね。
企業の利益と社会の利益この二つのバランスを上手く取れるような特許の運用施策が必要であり、今現在もそのための議論が各国で進められています。
2008年06月11日
2008年06月09日
遺伝子特許とバイオビジネスの問題
European Journal of Human Genetics 誌の今月号に、遺伝子診断の特許とライセンシングについて、ESGHの一つの提言が掲載されています。
この論文では、
・ クレームの幅や特許可能な要件を制限することで、登録される特許の質を高めること
・ 基礎的な発明のライセンスは非排他的で、適正な価格でされるべきで、1つのモデルとしてパテントプールがあること
・ そして、教育の必要性や、ライセンスを提供する側やライセンスを受ける側、各専門家の間での対話が必要である
などが述べられています。
この論文はnature.comから無料で提供されていますので、興味のある方は読んでみるとよいでしょう。
この論文では、
・ クレームの幅や特許可能な要件を制限することで、登録される特許の質を高めること
・ 基礎的な発明のライセンスは非排他的で、適正な価格でされるべきで、1つのモデルとしてパテントプールがあること
・ そして、教育の必要性や、ライセンスを提供する側やライセンスを受ける側、各専門家の間での対話が必要である
などが述べられています。
この論文はnature.comから無料で提供されていますので、興味のある方は読んでみるとよいでしょう。
2008年03月03日
最近話題のiPS
ご無沙汰しております。
バイオ、医療関連のニュースを毎日チェックしていると当然ここ最近の話題で目に触れる機会が多いがiPS細胞関連ですね。
「京都大学の日本人研究者山中教授の将来のノーベル賞受賞は確実」「今後細胞バンクの整備を進めて、基礎研究だけでなく実際の再生医療においても日本が世界をリードする基盤を築く」「国内の複数研究機関が参加する"iPS研究拠点"が整備された」「米国大統領、iPS細胞研究を支持」
などなど連日のように報道され、この画期的な細胞生物学上のブレークスルーについてはここをご覧の皆さんもご存知かと思いますが、本当に素晴らしい驚くべき革新ですね。わが国がこの分野で世界をリードし、人々の幸福に貢献できるとしたら素晴らしく誇らしい限りです。
さて、このiPS細胞ですが知財関連はどのようになっているのでしょうか。ためしにIPDLで
発明者:山中伸弥
と簡易検索してみると
国内では7件の特許が出願されていることがわかります。
1. 特開2005-110565 分化多能性維持剤
2. 特開2004-154135 ノックアウト非ヒト動物
3. 特開2003-265166 ECAT5ノックアウト細胞
4. 再表2005/080598 体細胞核初期化物質のスクリーニング方法
5. 再表2005/035562 新規な細胞増殖促進剤
6. 再表2004/067744 胚性幹細胞の自己複製決定因子
7. 再表02/097090 ES細胞特異的発現遺伝子
上記のうち最も公開年度の早い「7」の出願は、ES細胞特異的発現遺伝子に関するもので合計7つの遺伝子が特定されています。この頃の研究成果がその後のiPS細胞の成功に繋がっているのですね。
簡易検索の結果、iPS細胞に直接関わる、マウスOct3/4,Sox2,Klf4,c-Mycが成熟細胞に分化万能性を与えるという直接の証拠を提示する出願は見当たりませんでした。当然既に出願はしていることでしょうが、公開がまだなのでしょうね。
ところで、この「ノーベル賞級の世紀の大発見」。この発見の特許戦略をご担当なさっている弁理士の方はさぞや大きなプレッシャーを感じていらっしゃることでしょうね。。世紀の大発見も、権利として世界に対して優位性を発揮できなければ研究の意味の大部分が損なわれてしまうことになります。
今後のiPS細胞をめぐる国家戦略、非常に楽しみです。
バイオ、医療関連のニュースを毎日チェックしていると当然ここ最近の話題で目に触れる機会が多いがiPS細胞関連ですね。
「京都大学の日本人研究者山中教授の将来のノーベル賞受賞は確実」「今後細胞バンクの整備を進めて、基礎研究だけでなく実際の再生医療においても日本が世界をリードする基盤を築く」「国内の複数研究機関が参加する"iPS研究拠点"が整備された」「米国大統領、iPS細胞研究を支持」
などなど連日のように報道され、この画期的な細胞生物学上のブレークスルーについてはここをご覧の皆さんもご存知かと思いますが、本当に素晴らしい驚くべき革新ですね。わが国がこの分野で世界をリードし、人々の幸福に貢献できるとしたら素晴らしく誇らしい限りです。
さて、このiPS細胞ですが知財関連はどのようになっているのでしょうか。ためしにIPDLで
発明者:山中伸弥
と簡易検索してみると
国内では7件の特許が出願されていることがわかります。
1. 特開2005-110565 分化多能性維持剤
2. 特開2004-154135 ノックアウト非ヒト動物
3. 特開2003-265166 ECAT5ノックアウト細胞
4. 再表2005/080598 体細胞核初期化物質のスクリーニング方法
5. 再表2005/035562 新規な細胞増殖促進剤
6. 再表2004/067744 胚性幹細胞の自己複製決定因子
7. 再表02/097090 ES細胞特異的発現遺伝子
上記のうち最も公開年度の早い「7」の出願は、ES細胞特異的発現遺伝子に関するもので合計7つの遺伝子が特定されています。この頃の研究成果がその後のiPS細胞の成功に繋がっているのですね。
簡易検索の結果、iPS細胞に直接関わる、マウスOct3/4,Sox2,Klf4,c-Mycが成熟細胞に分化万能性を与えるという直接の証拠を提示する出願は見当たりませんでした。当然既に出願はしていることでしょうが、公開がまだなのでしょうね。
ところで、この「ノーベル賞級の世紀の大発見」。この発見の特許戦略をご担当なさっている弁理士の方はさぞや大きなプレッシャーを感じていらっしゃることでしょうね。。世紀の大発見も、権利として世界に対して優位性を発揮できなければ研究の意味の大部分が損なわれてしまうことになります。
今後のiPS細胞をめぐる国家戦略、非常に楽しみです。
2008年01月29日
「神の特許」 続報
ご無沙汰しております。
(なんと、これが今年初ブログだったのですね・・。今年は更新頑張ります。)
日本のニュースでも報道されていたのでご存知の方も多いでしょうが、
今回、ベンターのチームは細菌(M.genitalium)の全ゲノムの合成に成功したとのこと。
(Science電子版)
ニュース報道ではなぜか「生命の創造へ近づいた」とか「倫理上の問題が」といった風潮が目立ちます。
が、今回の論文は飽くまで「(ウイルスに比べれば)断然長いサイズのゲノムを合成することに成功した」という内容であって、この成果がただちに「人工生命」の成功を意味する訳ではです。
ところで、ポリテクブログ的にはこの論文の発表に先立つ特許出願がなされているはずなので、是非探り出したいところです。で、恐らくこれだと思います。
公報の内容は、大腸菌細胞を使って末端を処理したDNA断片を酵素を使って連結する、という感じでしょうか?
一方、こちらが今回の論文についてのプレス発表
J Craig Venter instituteプレス発表
(今のところ、Scienceの論文自体は入手できていないので、プレス発表のみで)
小断片を大腸菌でまずは中断片に合成し、次に酵母細胞内で繋ぎ合わせて「ゲノムの完全合成」となるようです。(論文読んでいないので、詳細わかりません。ごめんなさい・・・。)
いずれにせよ、将来彼らが実現させるであろう「人工生命」のためのツールのうちの一つが揃ったわけです。
今後はこの合成した全ゲノムを発現させる殻を用意し、ゲノムの複製・殻の増殖を制御できるようになれば本当の意味での「人工生命」の完成でしょうか。ベンターはそのために、微生物ゲノム全取替え実験にも既に成功しているんですね。
ところで、私ポリは学生時代は微生物、特に難培養性の微生物の研究に取り組んでおりましえたがこの「全ゲノム合成技術」、土壌中や海水中に存在する培養不能な微生物の研究にも多いに貢献しそうです。
環境中に存在する、培養不可の細菌等は現在培養が可能とされているものの数十倍存在すると思われていますが、環境サンプルからこれら培養不可な微生物の全ゲノムを合成することが可能となれば、有用遺伝子の取得とその制御機構の多くの情報が手に入るだろうと思います。さらにこの合成ゲノムをなんらかの「細胞の殻」で効率良く発現させることができれば、人類が利用可能になる微生物資源は飛躍的に増えるわけです。
今年中にはさらにベンターグループから発信されることでしょう。
楽しみです。
(なんと、これが今年初ブログだったのですね・・。今年は更新頑張ります。)
日本のニュースでも報道されていたのでご存知の方も多いでしょうが、
今回、ベンターのチームは細菌(M.genitalium)の全ゲノムの合成に成功したとのこと。
(Science電子版)
ニュース報道ではなぜか「生命の創造へ近づいた」とか「倫理上の問題が」といった風潮が目立ちます。
が、今回の論文は飽くまで「(ウイルスに比べれば)断然長いサイズのゲノムを合成することに成功した」という内容であって、この成果がただちに「人工生命」の成功を意味する訳ではです。
ところで、ポリテクブログ的にはこの論文の発表に先立つ特許出願がなされているはずなので、是非探り出したいところです。で、恐らくこれだと思います。
公報の内容は、大腸菌細胞を使って末端を処理したDNA断片を酵素を使って連結する、という感じでしょうか?
一方、こちらが今回の論文についてのプレス発表
J Craig Venter instituteプレス発表
(今のところ、Scienceの論文自体は入手できていないので、プレス発表のみで)
小断片を大腸菌でまずは中断片に合成し、次に酵母細胞内で繋ぎ合わせて「ゲノムの完全合成」となるようです。(論文読んでいないので、詳細わかりません。ごめんなさい・・・。)
いずれにせよ、将来彼らが実現させるであろう「人工生命」のためのツールのうちの一つが揃ったわけです。
今後はこの合成した全ゲノムを発現させる殻を用意し、ゲノムの複製・殻の増殖を制御できるようになれば本当の意味での「人工生命」の完成でしょうか。ベンターはそのために、微生物ゲノム全取替え実験にも既に成功しているんですね。
ところで、私ポリは学生時代は微生物、特に難培養性の微生物の研究に取り組んでおりましえたがこの「全ゲノム合成技術」、土壌中や海水中に存在する培養不能な微生物の研究にも多いに貢献しそうです。
環境中に存在する、培養不可の細菌等は現在培養が可能とされているものの数十倍存在すると思われていますが、環境サンプルからこれら培養不可な微生物の全ゲノムを合成することが可能となれば、有用遺伝子の取得とその制御機構の多くの情報が手に入るだろうと思います。さらにこの合成ゲノムをなんらかの「細胞の殻」で効率良く発現させることができれば、人類が利用可能になる微生物資源は飛躍的に増えるわけです。
今年中にはさらにベンターグループから発信されることでしょう。
楽しみです。
2007年12月25日
ヘルシア緑茶、ヘルシアウォーター(花王)
まずは、花王のヘルシア。

体脂肪低減効果を挙げていますが、高濃度茶カテキンを摂取すると、脂質のβ酸化関連酵素の遺伝子発現量が増加し、β酸化活性上昇して、肝臓での脂質代謝が活発になるというメカニズムのようです。
ラベルを見てみると……

さりげなく「特許」と書いてありますね。
カテキン類を高濃度に含有する飲料とその製造方法について権利化しています。
・特許3329799(容器詰飲料)
・特許3338705(容器詰飲料の製造方法)
スポーツドリンクに関しては、
・特許3378577(飲料)
・特許3615213(容器詰飲料)
などが権利化されています。

体脂肪低減効果を挙げていますが、高濃度茶カテキンを摂取すると、脂質のβ酸化関連酵素の遺伝子発現量が増加し、β酸化活性上昇して、肝臓での脂質代謝が活発になるというメカニズムのようです。
ラベルを見てみると……

さりげなく「特許」と書いてありますね。
カテキン類を高濃度に含有する飲料とその製造方法について権利化しています。
・特許3329799(容器詰飲料)
・特許3338705(容器詰飲料の製造方法)
スポーツドリンクに関しては、
・特許3378577(飲料)
・特許3615213(容器詰飲料)
などが権利化されています。
2007年12月24日
身の回りの特許
コンビニやスーパーに立ち寄ると、実に多くの特定保健用食品や保健機能食品が多く並んでますね。何点か購入してきたので、次回から、特許的な視点からご紹介したいと思います。


2007年11月21日
画像類似検索
2007年11月7日〜9日にかけて開催された、特許・情報フェア&コンファレンスに行ってきました。
特許・情報フェアは、知財財産に関する最新の開発動向がわかる良い機会なのですが、その中でも、リコーテクノシステムズの「RIPWAY」の類似画像検索機能に興味を惹かれました。これは、検索したい画像を指定して、膨大な公報中図面中から、類似した画像を検索するものです。
従来、図形・構造の検索は、特定の場合では可能だったのですが(例えば…図形商標の場合はウィーン図形分類、化学物質の場合は化学構造検索が可能ですね)、特許図面そのものを検索する手法が存在しなかったので、斬新さを感じました。
ところで、この類似画像検索技術、医療の分野でも応用研究が進められているようです。
実際に簡易検索してみると…特開2002-230518(特許4021179)などが代表例として挙げられますが、これは画像診断の結果を過去の症例と比較して類似例を提示するというものです。先日病院を訪れる機会があったのですが、画像診断の結果を元に治療方針を議論している医師の姿を見て、新しい診断技術がもたらす影響は計り知れないと感じた次第です。
今後、画像を使った検索が身近になる日も近いのではないでしょうか。
特許・情報フェアは、知財財産に関する最新の開発動向がわかる良い機会なのですが、その中でも、リコーテクノシステムズの「RIPWAY」の類似画像検索機能に興味を惹かれました。これは、検索したい画像を指定して、膨大な公報中図面中から、類似した画像を検索するものです。
従来、図形・構造の検索は、特定の場合では可能だったのですが(例えば…図形商標の場合はウィーン図形分類、化学物質の場合は化学構造検索が可能ですね)、特許図面そのものを検索する手法が存在しなかったので、斬新さを感じました。
ところで、この類似画像検索技術、医療の分野でも応用研究が進められているようです。
実際に簡易検索してみると…特開2002-230518(特許4021179)などが代表例として挙げられますが、これは画像診断の結果を過去の症例と比較して類似例を提示するというものです。先日病院を訪れる機会があったのですが、画像診断の結果を元に治療方針を議論している医師の姿を見て、新しい診断技術がもたらす影響は計り知れないと感じた次第です。
今後、画像を使った検索が身近になる日も近いのではないでしょうか。
2007年10月02日
ネズミ?
おもしろーい特許を見つけました。
と言っても、クライミングや登山に興味の無い方にはピンとこないでしょうが・・。
(毎度毎度、こんなマイナースポーツのネタばかりじゃいつまで経ってもアクセス数伸びませんよね・・・。まあ、クライミング以外のネタのブログは私以外のポリテクスタッフに任せることにします。)
今日のネタはこれ↓

写真は
こちらからの引用です。
そしてこのクライミングトレーニング用器具の出願はこちら↓
JPA_2000513617.pdf
ご覧になったことのある方もいらっしゃるでしょうが、本来のクライミングウォール(人工壁)は上へ上へと登って、登り終わったら当然降りてくるものですが、この発明「クライミングディスク」は回転するディスクの表面についたホールド(手がかり)をクライマーが満足するまで(?)登り続けることができるのです。なんと省スペース!同じ、省スペースをコンセプトにした人工壁は他にもあるのを知っていますがディスク状というのは他にないでしょう。
ところでどこかでこれ体験できないものでしょうか。
こんな気分になるのかな?

と言っても、クライミングや登山に興味の無い方にはピンとこないでしょうが・・。
(毎度毎度、こんなマイナースポーツのネタばかりじゃいつまで経ってもアクセス数伸びませんよね・・・。まあ、クライミング以外のネタのブログは私以外のポリテクスタッフに任せることにします。)
今日のネタはこれ↓

写真は
こちらからの引用です。
そしてこのクライミングトレーニング用器具の出願はこちら↓
JPA_2000513617.pdf
ご覧になったことのある方もいらっしゃるでしょうが、本来のクライミングウォール(人工壁)は上へ上へと登って、登り終わったら当然降りてくるものですが、この発明「クライミングディスク」は回転するディスクの表面についたホールド(手がかり)をクライマーが満足するまで(?)登り続けることができるのです。なんと省スペース!同じ、省スペースをコンセプトにした人工壁は他にもあるのを知っていますがディスク状というのは他にないでしょう。
ところでどこかでこれ体験できないものでしょうか。
こんな気分になるのかな?

2007年09月06日
つま先の特許
ご無沙汰しております。
前回宣言した通り、今回のネタは「ロッククライミングと特許」です。
その中でも特にお世話になるギアが「クライミングシューズ」です(下写真参照)。
このクライミングシューズ、形状を見てわかる通り普段我々が街中で履く靴とは大きく異なります。岩を登る用途に特化した特殊な造形、素材を持っています。
普通の靴との違いのうちで、ソール(靴底)の形状の違いは特に際立っています。
このような特徴は岩の小さな凹凸を上手く指先で捉えてクライマーの体重を支え、少しでも岩と靴との摩擦を増やすことでクライミングを手助けするためのものです。この特徴によりクライマーは普通の靴では到底登り得ないような垂直の壁、垂直以上に傾斜のついた岩壁を攀じ登ることが可能になります。

今回、このクライミングシューズの形状・素材に関する特許を簡易検索しました。検索の結果、ちょっと面白い発明が見つかりました。

これまでクライマーが目にしてきたどんなクライミングシューズにもない、極めて斬新な形なのです。
実はこの意外な靴底形状を持つクライミングシューズ、既に商品化されています。アメリカに本社を置くMADROCK社の製品がそれです。
今回簡易検索をしてみて、クライミングシューズのソールの素材・形状に関する特許出願は想像していたよりもずっと数が少なかったです。ソールの開発には膨大な時間と開発費を各社投入しているはずなのですが、情報の公開による模倣品の出現を恐れてのことなのか、各社権利化の意識は低いようです。
そんな中で見つけたMADROCK社。
前回宣言した通り、今回のネタは「ロッククライミングと特許」です。
ところで、我々クライマーがロッククライミングを行う時、さまざまなクライミングギアを使います。ロープ、ハーネス(安全ベルト)、ヘルメット、ヘッドランプ・・・などなど多くのギアが様々な場面で必要になるのです。
その中でも特にお世話になるギアが「クライミングシューズ」です(下写真参照)。
このクライミングシューズ、形状を見てわかる通り普段我々が街中で履く靴とは大きく異なります。岩を登る用途に特化した特殊な造形、素材を持っています。
普通の靴との違いのうちで、ソール(靴底)の形状の違いは特に際立っています。
普通の靴と違い靴底のゴムのパターンは凹凸の全くない、フラットな形状になっていてつま先は鋭く尖っています。中にはつま先が大きく下向きにカーブしたものもあります。さらにこの靴底はザラザラした樹脂素材により作られていて、手で触れてみるとその違いが良くわかります。
このような特徴は岩の小さな凹凸を上手く指先で捉えてクライマーの体重を支え、少しでも岩と靴との摩擦を増やすことでクライミングを手助けするためのものです。この特徴によりクライマーは普通の靴では到底登り得ないような垂直の壁、垂直以上に傾斜のついた岩壁を攀じ登ることが可能になります。
今回、このクライミングシューズの形状・素材に関する特許を簡易検索しました。検索の結果、ちょっと面白い発明が見つかりました。
この発明、アメリカのChu氏によるもので、これまで製品化されてきたクライミングシューズのソールの形状とは異なる形状に関するものです。
普通のクライミングシューズの靴底はフラットに作られていて凹凸はありませんが、このChu氏の発明ではつま先の周囲にU字型の「リム」が付け加えられています。このリムはその他の部分よりも一段厚くなっていて、その結果このシューズのソールは二段階の厚さを持つようになっています。
これまでクライマーが目にしてきたどんなクライミングシューズにもない、極めて斬新な形なのです。
実はこの意外な靴底形状を持つクライミングシューズ、既に商品化されています。アメリカに本社を置くMADROCK社の製品がそれです。
MADROCK社とChu氏の関係はHP情報からは把握できませんでしたが、Chu氏にはこの特許以外にもクライミングシューズ関連の出願がいくつかあることから、氏がクライミングシューズメーカーの技術者であることは想像できます。
今回簡易検索をしてみて、クライミングシューズのソールの素材・形状に関する特許出願は想像していたよりもずっと数が少なかったです。ソールの開発には膨大な時間と開発費を各社投入しているはずなのですが、情報の公開による模倣品の出現を恐れてのことなのか、各社権利化の意識は低いようです。
そんな中で見つけたMADROCK社。
この新進のクライミング用品メーカーの特許を巡る動きには、今後も注目してみたいと思いました。
2007年08月08日
37年前のエベレスト
ご無沙汰しております・・・
久々の日記は完全に私の趣味の話です。
先日、ある方から1970年6月25日発刊の雑誌、
「毎日グラフ増刊 エベレスト登頂」 号を頂きました。
私の趣味が山登りということを知った知人が、物置の中の古い書類をかき分け、探し出してくださったのでした。

表紙を見ると(上)、エベレスト頂上で日の丸を広げ、羽毛服に身を包む恐らくは植村直巳とおぼしきクライマーがこちらを見ています。日本人、エベレスト初登頂の記念すべき瞬間です。
今でこそ日本人エベレスト(チョモランマ、サガルマータ)登頂者は、今では毎年のように数名ずつの頂者を出しています。
しかし、植村直巳・松浦輝夫が初登頂を果たした70年当時、日本人にとってエベレスト登頂は果てしなく大きな目標であり、国家の一大事業であったということは良く知られたことです。
そこで、改めて今回頂いた毎日グラフの表紙を見てみると、クライマーの装備を見れば一目瞭然、現代の登山と当時のそれは全く異なるものだということは想像に難くありません。
当時はGORE-TEXもなく、チタン製の食器・登攀具もありません。当然ガスボンベも重い鉄製です。ロープも現代の優れた化学繊維は無く、太く重いものでした。
それでも植村と松浦は困難を乗り越え見事に登頂を果たしました。
彼らが使っていた装備は現在の登山者が使うものの性能には遠く及びませんが、忍耐力・体力・行動力・戦略眼はむしろ現代人が真似のできないくらい卓越したものだったのでしょう。
ところで、現代のエベレストを含むヒマラヤなどの高峰登山の主流は当時のものとは大分変わってきています。現在のツワモノ登山者達は
「無酸素・少人数・少ない装備で・できるだけ早く」
をモットーに8000メートルを超える高峰の壁をよじ登ります。
当時は存在しなかった軽い金属製の装備、軽くて高機能の繊維で作られた衣服・テント・ロープの存在がそんなスタイルを可能にしているのです。
彼らの中にはロープもほとんど使わず(つまり落ちたたら即墜死)、寝袋すらロクに持たずに8000メートル峰を攻略する超・ツワモノも存在します。
これら装備の改良に伴って、植村・松浦がエベレストを登頂した当時に比べ、ふつうにエベレストに登頂するという行為はかなり楽なものになりました。しかし、登山者達は楽な登山ばかりを追及するのではなく、科学技術が登山にもたらした恩恵を手に、より身軽で自由なスタイルでより困難な山登りを始めたと言えます。
この数十年の間に、科学技術の発展に伴って登山者達はより身軽で自由になり、より困難な世界を切り開いてきたのです。
科学技術と密接に関係した分野にありながら、技術の発展の恩恵を受ければ受けるほど、自然に近い身軽な状態に近づく。そういう見方で見ると、登山の世界も面白くないでしょうか。
それでは完全に趣味のお話で失礼致しました。
次回は登山・クライミング関連の特許の話題でも、と考えております・・・
久々の日記は完全に私の趣味の話です。
先日、ある方から1970年6月25日発刊の雑誌、
「毎日グラフ増刊 エベレスト登頂」 号を頂きました。
私の趣味が山登りということを知った知人が、物置の中の古い書類をかき分け、探し出してくださったのでした。
表紙を見ると(上)、エベレスト頂上で日の丸を広げ、羽毛服に身を包む恐らくは植村直巳とおぼしきクライマーがこちらを見ています。日本人、エベレスト初登頂の記念すべき瞬間です。
今でこそ日本人エベレスト(チョモランマ、サガルマータ)登頂者は、今では毎年のように数名ずつの頂者を出しています。
しかし、植村直巳・松浦輝夫が初登頂を果たした70年当時、日本人にとってエベレスト登頂は果てしなく大きな目標であり、国家の一大事業であったということは良く知られたことです。
そこで、改めて今回頂いた毎日グラフの表紙を見てみると、クライマーの装備を見れば一目瞭然、現代の登山と当時のそれは全く異なるものだということは想像に難くありません。
当時はGORE-TEXもなく、チタン製の食器・登攀具もありません。当然ガスボンベも重い鉄製です。ロープも現代の優れた化学繊維は無く、太く重いものでした。
それでも植村と松浦は困難を乗り越え見事に登頂を果たしました。
彼らが使っていた装備は現在の登山者が使うものの性能には遠く及びませんが、忍耐力・体力・行動力・戦略眼はむしろ現代人が真似のできないくらい卓越したものだったのでしょう。
ところで、現代のエベレストを含むヒマラヤなどの高峰登山の主流は当時のものとは大分変わってきています。現在のツワモノ登山者達は
「無酸素・少人数・少ない装備で・できるだけ早く」
をモットーに8000メートルを超える高峰の壁をよじ登ります。
当時は存在しなかった軽い金属製の装備、軽くて高機能の繊維で作られた衣服・テント・ロープの存在がそんなスタイルを可能にしているのです。
彼らの中にはロープもほとんど使わず(つまり落ちたたら即墜死)、寝袋すらロクに持たずに8000メートル峰を攻略する超・ツワモノも存在します。
これら装備の改良に伴って、植村・松浦がエベレストを登頂した当時に比べ、ふつうにエベレストに登頂するという行為はかなり楽なものになりました。しかし、登山者達は楽な登山ばかりを追及するのではなく、科学技術が登山にもたらした恩恵を手に、より身軽で自由なスタイルでより困難な山登りを始めたと言えます。
この数十年の間に、科学技術の発展に伴って登山者達はより身軽で自由になり、より困難な世界を切り開いてきたのです。
科学技術と密接に関係した分野にありながら、技術の発展の恩恵を受ければ受けるほど、自然に近い身軽な状態に近づく。そういう見方で見ると、登山の世界も面白くないでしょうか。
それでは完全に趣味のお話で失礼致しました。
次回は登山・クライミング関連の特許の話題でも、と考えております・・・
